EQUILIBRES - GILLES HEKIMIAN TRIO

静かな余韻の中に醸し出されている、ヨーロッパらしい寂寥感に浸れる逸品。フランス語で「釣合い・均衡」を意味するタイトルのフォントでさえ、静謐なイメージを連想させる。

月一枚のペースで澤野工房がお贈りしているピアノ・トリオCDを毎回楽しみにしていらっしゃる熱心なピュア・ジャズ・ファンの皆様、今回はビル・エヴァンスの流れを汲むフランスのトリオとして夙にその名のみ知れ渡っていたジル・エキミアンの登場です。

個人的には、一昔前に某雑誌に写真入りで紹介されたのを見て苦心惨憺の末入手、その内容は期待に違わぬもので、折に触れ取り出しては針を下ろす愛聴盤の一枚となっています。録音は1977年、ピアノのエキミアンを含めトリオの三名とも無名に近く、本作以外に吹き込みがあるのか不明で、恥ずかしながら紹介に困る次第です。しかしながら、程よく抑制されたピアノのタッチ、余韻を生かして陰翳・寂寥感を強調した曲想といった特徴が顕著で、趣味の良いヨーロッパらしいトリオものです。

先頃発売のB.エゲルブラダ・トリオやTRIO CONCEPTION(Jan Huydts)をお気に入りの向きには感動間違いなし。自作曲中心の選曲ですが、中でも長尺の”Inner Swing”という曲をじっくり味わってみてください。秋深まる季節に相応しい一作と申せましょう。