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TERRA FURIOSA - GIOVANNI MIRABASSI TRIO

TERRA FURIOSA - GIOVANNI MIRABASSI TRIO

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TERRA FURIOSA

ジョバンニ・ミラバッシ・トリオ


Release Date : 01/25/2008
Product Number : AS073
Recording : 2007
Format : CD

この切なさ、ただあなただけに。天才ジョバンニ・ミラバッシが新しいトリオで臨む意欲作。痛みを知り、傷を抱く者たちへの、妙なる救済の調べがここに。

太宰治の忌日である桜桃忌、彼の菩提寺に参集するファンたちはお互いに顔を見合わせないのだという。一説によると、彼ら(女性多数ゆえ彼女ら、と言うべきか)はそれぞれに太宰は自分だけのものだ、と思っているからだそうだ。つまり、同じ作家の愛読者でありながら、その対象を共有することができない心根がそこに表れている。

もちろん勘違いだ。太宰は恐るべき言葉の魔術を以って、あたかも読む者当人にだけ内心の秘密を打ち明けるがごとき文体を確立しているのだから。何故こんなことを長々と書くか。ミラバッシの新作を聞いて太宰ファンの心理が分かったからだ。

Tr.1の曲目を見て、「どうして……?」と思った。だって、これは「アルフォンシーナと海」ではないか。入水して果てたアルゼンチンの女流詩人アルフォンシーナ・ストルニを偲ぶA・ラミレスの名旋律。ミラバッシはもともと歌曲であるこの曲の歌詞を絶対知っている。その上で彼だけにしか歌えない歌を言葉なくして歌いあげるのだ。今もなお、彼のシグネチュアと言える「不屈の民」がそうであるように、こういうマテリアルを、いくらでもオリジナルが書ける彼が取り上げることの意味を思う。

分かりきったことも一応書く。このアルバムはトリオのメンバーを一新して臨んだ意欲作で、いつものようにオリジナルが素晴らしい。めずらしく正味のブルースも演っている(Tr.10)。しかし、個人的にはTr.1だけで決まりだ。ミラバッシとの間に回路が開き、深夜、彼の想いがそこを流れてくるのを受け止める。そして愚かにも思う。「ミラバッシは我が為に演奏している」と。

心の痛み、傷、救済を求める想い…。敢えて言えば、美しい音を出すピアニストは幾人(いくたり)もいる。ただ、ミラバッシほど「切ない」音楽を奏でる人はいない。誰にでも分かる必要などさらさらない。あなたにだけ、それが分かればいい。唯一無二、ミラバッシのジャズとはそういう音楽なのだ。

Text by 北見 柊

FEATURED ARTISTS
Giovanni Mirabassi : piano
Gianluca Renzi : bass
Leon Parker : drums

TRACKLIST
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