MARMOSETS - ROBERT LAKATOS

超絶の名曲、”Psalms”に酔え！美音が織り上げる、魂のタペストリー。他の追随を許さぬラカトシュの才能が、ソロ・ピアノで開花した！

キース・ジャレットのソロ・ピアノは数多くあるが、スタジオ録音となると数えるほどだ。タイトルを挙げるとなると、さしずめ“Facing You”か。その理由は冒頭の「In Front」という曲の印象が強いせいだと思う。サワノで言うならミラバッシの「Avanti!」。言うまでもないが、オープナーは「不屈の民」の名演だ。

以前にも書いたが、ソロというのはプレイヤーの力量がモロに出てごまかしが利かない。それだけに、「掴みが肝心」なのだ。ロバート・ラカトシュ初のソロ作品集はどうか。……スゴイ！……「Psalms」、「詩篇」と名付けられたラカトシュ実兄のオリジナル。左手が刻み出す、厳粛なリズム・パターンに引き続いて紡ぎ出される演奏の、なんと繊細で美しいことか。それこそ、ラカトシュの故郷であるハンガリーの、荒涼として広がる平原に、冬の曇天から光の階梯が下りてくるのを目の当たりにするような……。

敢えて不粋に言うならば、これぞユーロ・スピリチュアル。ともあれ、聴いていただきたい。きっと忘れられない一曲となるだろう。名曲・名演の誕生に立ち会うという、嬉しくも稀な体験を共有していただけるはずだ。もちろん、美音で鳴らすラカトシュのこと、スタンダードを中心にしたその他のプログラムも魅力たっぷり。個人的には、アビー・リンカーンの「Throw It Away」にニヤリとさせてもらった。心憎いセンスもまた実力か。ソロ・ピアノという高きハードルも見事にクリア……ラカトシュからは目が離せそうにない。